なぜか惹かれるあの人の仕事・生き方:憧れをヒントに「本当に大切にしたい価値観」を見つける自己分析
就職活動、本当にお疲れ様でした。思い描いた結果にならず、今、強い不安や焦りを感じているかもしれません。特に、「なぜうまくいかなかったのか分からない」「自分に何が向いているのか、本当にやりたいことが分からない」という状況では、次に何から始めれば良いのか見失ってしまうこともあるでしょう。
多くの場合、就職活動の失敗は、あなたの能力や価値そのものを否定するものではありません。むしろ、自分自身のことを十分に理解しないまま、あるいは世間の一般的な価値観に流されるまま就活を進めてしまった結果かもしれません。
ここで立ち止まり、就活失敗を単なる挫折ではなく、自分自身と深く向き合い、本当に納得のいくキャリアを見つけるための大切な機会と捉え直してみませんか。そのための強力な羅針盤となるのが、「自己分析」のやり直しです。
本記事では、自己分析の中でも特に「なぜか惹かれるあの人や理想の働き方」という視点から、あなたの隠れた価値観や本当に大切にしたいことを見つけ出す方法をご紹介します。これは、漠然とした興味や過去の経験だけでなく、未来への憧れを手がかりに、就活失敗の原因を明らかにし、本当にやりたい仕事を見つけるための実践的なアプローチです。
なぜ「憧れ」が自己分析のヒントになるのか
「自己分析で過去を振り返るのは疲れた」「やりたいことが何なのか、さっぱり分からない」という方もいるかもしれません。そのような場合に有効なのが、「憧れ」というポジティブな感情からのアプローチです。
あなたが「すごいな」「素敵だな」「あんな風になりたいな」と感じる人、働き方、ライフスタイルには、必ず理由があります。そして、その理由は、あなたが無意識のうちに「大切にしたい」と感じている価値観や、「満たしたい」と願っている欲求と深く結びついています。
就活でうまくいかなかった原因の一つに、あなたの内にあるこうした価値観や欲求が、選んだ業界・企業・職種の文化や仕事内容と合っていなかった、という可能性が考えられます。表面的な条件(会社の知名度や給与など)だけで選んでしまい、自分の根源的な「大切にしたいこと」を見落としていたのかもしれません。
憧れを手がかりに自己分析を行うことで、過去の経験を掘り下げるだけでは気づけなかった、あなたの心の奥底にある「本当に大切にしたいこと」を明らかにすることができます。そして、それが就活失敗の真の原因を見つけ、今後のキャリア選択の明確な軸となるはずです。
「憧れ」から価値観を見つける自己分析ステップ
では、具体的にどのように「憧れ」を自己分析に活かしていけば良いのでしょうか。以下のステップで進めてみましょう。
ステップ1:あなたの「憧れ」をリストアップする
まずは、あなたが「なぜか惹かれる」「こんな風になれたら良いな」と感じる対象を、頭に浮かぶままに書き出してみましょう。人物でも、働き方でも、ライフスタイルでも構いません。
- 具体的な人物: 会社の先輩、大学の教授、起業家、アーティスト、友人、家族など、身近な人から著名人まで。
- 抽象的な働き方: 自由な時間が多い働き方、専門性を極める働き方、多くの人をまとめる働き方、地域に貢献する働き方など。
- 理想のライフスタイル: 世界中を旅しながら働く、自然に囲まれて暮らす、趣味に打ち込む時間が多い、社会活動に積極的に関わるなど。
いくつか例を挙げてみましょう。
- 「〇〇大学の△△先生(教授)みたいに、一つの分野を深く研究して、社会に影響を与えたい」
- 「フリーランスのデザイナーとして活躍している先輩みたいに、場所を選ばずに自由に働きたい」
- 「ボランティア団体のリーダーのように、人を巻き込んで大きな課題を解決したい」
- 「スタートアップ企業のCEOみたいに、新しいサービスを生み出して世の中を変えたい」
- 「海外で働く人のように、異文化の中で多様な価値観に触れたい」
- 「会社員でも、プライベートの時間を大切にして、趣味や自己投資に時間を使えている友人Aのような働き方をしたい」
難しく考えず、直感で「いいな」と思うものを書き出してみてください。
ステップ2:なぜそれに「憧れる」のかを深掘りする
リストアップしたそれぞれの憧れについて、「なぜそれに惹かれるのだろう?」と理由を具体的に考えてみましょう。その人や働き方の、どんな点に魅力を感じますか?
例: * 憧れの対象: 〇〇大学の△△先生(教授) * なぜ憧れる? * 一つの分野について誰よりも詳しく、専門性が高いから * 自分の研究成果で、社会の常識を変えるような発見をしているから * 学生からの質問にいつも丁寧に答えてくれるから(教育への情熱?) * 国内外の学会で発表していて、世界的に認められているから * 研究室の雰囲気がいつも和やかで、楽しそうだから(人間関係?) * 憧れの対象: フリーランスのデザイナーとして活躍している先輩 * なぜ憧れる? * 働く場所や時間を自分で決められる自由さがあるから * 好きなデザインの仕事だけで生計を立てているから * 複数の企業やプロジェクトに関わっていて、幅広い経験ができそうだから * 自分のスキルが直接評価され、収入に繋がるから * 自分の名前で仕事をしていて、責任感とやりがいを感じられそうだから
このように、「なぜ?」を繰り返して、具体的な行動や状況、その背景にあると思われる感情などを掘り下げていきましょう。
ステップ3:深掘りした理由から「価値観」を抽出する
ステップ2で掘り下げた具体的な理由一つひとつに、「それは自分にとってどんな意味があるのだろう?」と問いかけてみましょう。そこに隠されている、あなたの根源的な価値観や満たしたい欲求を抽出します。
例: * 憧れの理由: 「一つの分野について誰よりも詳しく、専門性が高いから」 * 隠された価値観: 「知的好奇心を満たしたい」「専門性を深めたい」「探究心がある」「成長し続けたい」 * 憧れの理由: 「自分の研究成果で、社会の常識を変えるような発見をしているから」 * 隠された価値観: 「社会に貢献したい」「影響力を持ちたい」「新しいものを創造したい」 * 憧れの理由: 「好きなデザインの仕事だけで生計を立てているから」 * 隠された価値観: 「好きなことを仕事にしたい」「自己表現したい」「創造性を発揮したい」 * 憧れの理由: 「複数の企業やプロジェクトに関わっていて、幅広い経験ができそうだから」 * 隠された価値観: 「多様な経験をしたい」「変化を求める」「刺激が欲しい」 * 憧れの理由: 「働く場所や時間を自分で決められる自由さがあるから」 * 隠された価値観: 「自由を求める」「自分の裁量で仕事をしたい」「柔軟な働き方をしたい」
このように、それぞれの憧れから複数の価値観や欲求が抽出されるはずです。これらをすべてリストアップしてください。
ステップ4:抽出した価値観を整理し、優先順位をつける
ステップ3で抽出された価値観や欲求は、あなたの「本当に大切にしたいこと」のリストです。これらを眺めて、特に重要だと感じるもの、複数回登場するものなどを整理してみましょう。
- 例えば、「知的好奇心」「専門性」「影響力」「社会貢献」「自由」「創造性」「多様性」「成長」といった言葉が出てきたとします。
- これらをグルーピングしたり、自分にとってどれが最も重要か、あるいは譲れない条件かを考えて、優先順位をつけていきます。
完璧な優先順位をつける必要はありません。あくまで、自分が働く上で、あるいは人生において、何を特に大切にしたいのかを言語化することが目的です。
ステップ5:言語化した価値観と就活失敗経験を照らし合わせる
明確になったあなたの「本当に大切にしたいこと(価値観)」を手に、これまでの就職活動を振り返ってみましょう。
- なぜうまくいかなかったのか?
- 応募していた業界や企業の文化、仕事内容は、あなたの価値観とどれくらい合っていましたか?
- 面接や書類作成の際、あなたのこの価値観は十分に表現できていましたか?
- そもそも、自己分析が不十分で、この価値観に気づかないまま企業を選んでいませんでしたか?
- 周囲の意見や一般的な評価を気にしすぎて、自分の本音である価値観を無視してしまっていませんでしたか?
たとえば、「自由」や「多様な経験」を大切にしたいという価値観が強いのに、規律が厳しく、一つの業務に特化する傾向のある企業ばかりに応募していた、といったように、あなたの価値観とこれまでの選択の間にズレが見つかるかもしれません。
また、過去の経験(アルバイト、サークル、学業など)を振り返り、この価値観が満たされたときに楽しかったことや、逆に満たされなかったときに辛かったことを思い出してみましょう。これは、抽出した価値観が本当にあなたにとって重要であることの裏付けになります。
ステップ6:明確になった価値観を元に、今後の仕事選びの基準を設定する
自己分析を通じて明らかになった「本当に大切にしたい価値観」は、今後の仕事選びの強力な基準となります。
- この価値観を満たせる可能性が高い業界や職種は何か?
- どのような企業文化を持つ会社であれば、自分らしく働けそうか?
- 働き方(リモートワークの可否、勤務時間、裁量権など)は、この価値観にどう影響するか?
具体的な企業を探す前に、まずは「働く上で絶対に譲れない条件」「満たされていると嬉しい条件」などを、明確になった価値観に基づいてリストアップしてみましょう。これにより、闇雲に企業を探すのではなく、本当に自分に合った場所を見つけるための精度が高まります。
憧れからの自己分析の注意点
このアプローチは有効ですが、いくつか注意点もあります。
- 憧れの対象の「すべて」を目指す必要はない: あくまで、その人や働き方の「どんな側面に憧れるか」を通じて、自分の価値観や欲求を見つけることが目的です。憧れの対象そのものになる必要はありません。
- 表面的な部分に惑わされない: SNSなどで見られる華やかな一面だけでなく、地道な努力やその働き方のデメリットなども考慮に入れる冷静さも必要です。
まとめ:自己分析で羅針盤を見つけ、納得のいくキャリアへ
就職活動の失敗は、誰にとっても辛い経験です。しかし、それは自分自身の内面と向き合い、「本当に大切にしたい価値観」を見つけ出すための貴重な機会でもあります。
「なぜか惹かれる憧れ」を手がかりにした自己分析は、過去の経験を掘り下げるのとは異なる視点から、あなたの隠された本音を明らかにしてくれます。このプロセスを通じて見つけた価値観こそが、今後の仕事選びにおけるあなただけの羅針盤となるのです。
この羅針盤があれば、あなたは自信を持って次のステップに進めるはずです。漠然とした不安に立ち止まるのではなく、今回明らかになったあなたの価値観を胸に、改めて企業研究を進めたり、興味のある分野について深く調べてみたりしてください。
自己分析は一度やれば終わりではありません。キャリアを歩む中で、価値観が変化していくこともあります。しかし、この「自分は何を大切にしたいのか」という問いを持ち続けることが、納得のいく、あなたらしいキャリアを築くための何よりの力となるでしょう。応援しています。