あなたの「好き」や「気になる」を仕事にする:自己分析で隠れた興味を引き出す方法
就職活動、本当にお疲れ様でした。もし、今の状況に立ち止まり、なぜうまくいかなかったのだろう、何からやり直せば良いのだろう、と悩んでいるのであれば、この先をお読みください。
特に、「自己分析をしてみたけれど、結局自分が何をしたいのか分からなかった」「特別な経験がないから、アピールできる強みや『やりたいこと』が見つからない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
自己分析というと、これまでの経験を深掘りしたり、強みや弱みを洗い出したり、というイメージが強いかもしれません。もちろん、それらは非常に重要です。しかし、時にはそうした表面的な分析だけでは見えにくい、あなたの「本当の興味」や「内なる欲求」が、やりたい仕事を見つけるための大きなヒントになることがあります。
この記事では、これまでの固定観念にとらわれず、あなたの日常の「好き」や「気になる」という、一見仕事とは関係なさそうなものの中に隠された、本当にやりたいことを見つけるための自己分析の視点と具体的な方法をご紹介します。
なぜ「意外な興味」や「気になること」が自己分析の鍵になるのか
就職活動における自己分析は、多くの場合「企業に評価されるため」「選考を突破するため」といった目的意識が先行しがちです。そのため、「アピールできそうな経験」「社会で通用しそうなスキル」などに意識が向きやすく、純粋な「好き」や「興味」が見落とされてしまうことがあります。
しかし、あなたが無意識に惹かれるもの、時間を忘れて没頭できること、つい調べてしまうことの中には、あなたの価値観や潜在的な強み、さらには仕事を通じて満たしたい欲求が隠されている可能性が高いのです。これらは義務感からではなく、内側から自然に湧き上がってくるものだからこそ、あなたの本音や、仕事におけるモチベーションの源泉となりうるのです。
表面的なスキルや経験だけでなく、こうした「内なる興味」に目を向けることで、「本当に自分が心の底からやりたいと思えることは何だろうか」「どんな分野なら継続的に探求できるだろうか」といった問いに対する、より深く納得のいく答えが見つかるかもしれません。
あなたの「気になること」を見つける具体的な方法
では、どのようにして日常の中に隠れた「気になること」を見つけ出せば良いのでしょうか。特別なことをする必要はありません。あなたの普段の行動や思考を少し立ち止まって観察してみましょう。
ここではいくつかの具体的なヒントをご紹介します。
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日常の「情報接触」を振り返る:
- インターネットで「つい」見てしまうサイトや記事、動画のジャンルは何ですか。
- SNSでフォローしているアカウントや、「いいね」「保存」した投稿に共通点はありますか。
- ニュースや新聞で、特に目が留まる、または深掘りしたくなる話題は何ですか。
- 書店や図書館で、フラフラと立ち寄ってしまうコーナーはどこですか。
- YouTubeやポッドキャストで、無意識に再生してしまうコンテンツのテーマは何ですか。
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人とのコミュニケーションを振り返る:
- 友人や家族、知人との会話で、自分が特に熱く語ってしまう話題や、逆に相手の話に「食いついて」しまう話題は何ですか。
- 誰かの話を聞いて、「それはどういうこと?」「もっと詳しく知りたい」と自然に質問してしまうのは、どんなテーマについてですか。
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時間やお金の使い方以外の視点:
- 「もし時間とお金に全く縛りがなかったら、何を調べて、何を学び、どんな場所に行き、どんな人に会ってみたいか」を想像してみてください。
- 特定のサービスや製品、文化などに触れたときに、「これはどういう仕組みなんだろう?」「なぜこうなっているんだろう?」と疑問を持ったり、関心を持ったりすることはありますか。
- 「これを改善したらもっと良くなるのに」「こういうものがあったら便利なのに」とふと思いつくことはありますか。
これらの行動や思考の端々に、あなたの無意識の興味や関心が隠れています。まずは、良い悪いの判断をせず、「あ、今これに目が留まったな」「これ、ちょっと気になるな」という感覚を拾い上げて、メモしておく習慣をつけると良いでしょう。スマートフォンのメモ機能や手帳、ノートなど、形式は問いません。
見つけた「気になること」を深掘りする問いかけリスト
集めた「気になること」リストを眺めているだけでは、それがすぐに仕事に繋がるわけではありません。次に重要なのは、なぜそれが気になるのか、その背景にあるあなたの内面を探ることです。以下の問いかけを自分に投げかけ、さらに深掘りしてみましょう。
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問い 1: なぜ、それが特に気になるのだろう?
- そのテーマのどんな点に惹かれますか?(例: 新しさ、複雑さ、美しさ、社会貢献性、仕組み、歴史...)
- それはあなたにとって、どんな意味を持つテーマですか?
- そのテーマを通して、あなたはどんな気持ちになりますか?(例: ワクワクする、安心する、納得する、もっと知りたいと思う...)
- その背景に、あなた自身の過去の経験や価値観との繋がりはありますか?
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問い 2: それについて、どんなことを知りたいか?どんな行動を取りたいか?
- そのテーマについて、次に具体的に知りたいことは何ですか?(例: 歴史、最新技術、市場動向、成功事例、課題点...)
- もし自由に動けるなら、そのテーマに関してどんな行動を起こしてみたいですか?(例: 実際にやってみる、関連するイベントに参加する、関係者に話を聞く、自分で作ってみる...)
- そのテーマを探求することで、あなたは最終的にどうなりたいですか?(例: 詳しくなりたい、何かを創造したい、問題を解決したい、誰かを助けたい...)
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問い 3: それに関わるどんな人やモノ、情報に惹かれるか?
- その分野で尊敬する人物や、気になる企業・組織はありますか?
- そのテーマに関連する製品やサービス、技術で特に魅力を感じるものは何ですか?
- どんな情報源(書籍、ウェブサイト、コミュニティなど)から情報を得たいですか?
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問い 4: それを通じて、どんな状態になりたいか?誰かのどんな役に立ちたいか?
- その興味や関心は、あなた自身のどんな欲求(例: 成長したい、貢献したい、安定したい、刺激が欲しい、認められたい)を満たしますか?
- そのテーマに関連する活動を通じて、あなたは他者や社会にどんな貢献をしたいと考えますか?
これらの問いに答える過程で、「なぜ自分はこれに惹かれるのか」という理由や、その興味の先にどんな自分や社会像があるのかが見えてくるはずです。これは、あなたの根本的な動機や価値観を理解することに繋がります。
深掘りした興味を「仕事」に繋げる考え方
見つかった「気になること」やそれを深掘りして見えてきた背景にある欲求や価値観を、具体的に「仕事」にどう繋げれば良いでしょうか。
重要なのは、必ずしもその「気になること」がそのまま特定の職種になる必要はない、ということです。例えば、「猫に関する情報をつい見てしまう」という興味があったとします。もちろん獣医師やペットショップ店員という直接的な職種も考えられますが、それだけではありません。
- 関連業界: ペット用品メーカー、動物愛護団体、ペット保険会社、動物医療機器メーカーなど。
- 関連職種・職務内容:
- 情報発信・編集: 猫に関する情報を収集・整理し、ウェブサイトや雑誌、SNSなどで発信する(編集、ライター、SNS運用担当など)。
- 企画・マーケティング: 猫関連商品の企画、販売促進、イベント企画など。
- 研究・開発: 新しいペットフードや用品の開発など。
- デザイン: ペット用品のデザイン、関連施設の空間デザインなど。
- コンサルティング: ペット関連ビジネスへのコンサルティングなど。
- システム開発: ペット向けアプリやサービスの開発など。
このように、「猫が好き」という興味は、非常に多様な仕事に繋がる可能性があります。重要なのは、その興味の「対象」だけでなく、あなたがその対象に対してどのような関わり方をしたいのか、その興味を通じて満たしたいあなたの欲求は何なのかを考えることです。情報を集めるのが好きなのか、企画するのが好きなのか、世話をするのが好きなのか、問題を解決するのが好きなのか、など、興味の対象に対する「機能的な関心」を見つけ出すと、より幅広い仕事の選択肢が見えてきます。
さらに、「働く環境」という視点も重要です。動物と直接触れ合いたいのか、データや情報を扱う方が得意なのか、多くの人に情報を届けたいのかなど、どのような働き方があなたの興味や価値観を満たすかに合わせて、企業や職種を絞り込んでいくことができます。
自己分析の結果を統合し、次のステップへ
今回の「気になること」からの自己分析で得られた新たな視点や気づきを、これまでの経験の棚卸しや強み・弱み、価値観の分析結果と組み合わせてみましょう。
- 「過去に楽しかった経験で発揮した強み」と「今回見つけた『気になること』から導き出された欲求」に共通点はありますか?
- 「過去の失敗経験から分かった『避けたい環境』」と「『気になること』を活かせる働き方」は矛盾しませんか?
- 「客観的な適性検査の結果」と「今回の内面的な興味」を組み合わせると、どんな新しいキャリアの可能性が見えてきますか?
異なる角度からの自己分析結果を統合することで、より立体的なあなたの「やりたいこと」「向いていること」の輪郭が明確になってきます。
この統合された自己理解を元に、具体的な業界・企業研究に進んでください。今回見つけた興味や、そこから派生する働き方や価値観が実現できそうな企業を探し、企業文化や仕事内容を詳しく調べてみましょう。会社説明会に参加したり、OB/OG訪問をしたりすることで、自分の仮説を検証していくことができます。
就活失敗という経験は、決して無駄ではありません。立ち止まって自分自身と深く向き合う貴重な機会を与えてくれたと捉えることもできます。今回の自己分析を通じて、従来の枠にとらわれず、あなたの内側から湧き上がる「好き」や「気になる」に耳を澄ませてみてください。それが、あなたが心から納得して働ける場所を見つけるための羅針盤となるはずです。応援しています。